小説・・・ある マタギの話



マタギは炭焼き小屋にいた。
寡黙な人だった。

森の中で黙々と針葉樹を間引く姿を
その狼は小さい時から
付かず離れずして永い年月を見つめて来た。
時折チラッと狼の方を見るマタギの目は
澄んだ湖の底の様に・・・・
静かで深かった。

まだまだ・・・雪に埋もれている森ではあったが
ほのかに春の訪れを山のにおいが教えてくれ、
それを狼も肌で感じ始めていた。

マタギはまるで時計のように毎日朝4時半
スッと音も立てずに起き出す。
手早く身支度を整え、小屋のすぐ横を流れる
浅く細く水量の多い、清流の冷たい水で
顔を洗う。
ビックリするほど冷たいその水にも
もう慣れた手でいつも2度ほど顔を
バシバシ叩いてから、一回両手で手拭いの様に
顔を擦る。

炭を焼く事にかけては
まるで錬金術師のようであった。
坦々と仕事をこなして行く中に
計り知れない集中力と忍耐、
繊細な判断力と洞察をもって自身に追求する
その姿は神々しくさえあった。

狼という動物は利口で情が深いことを
マタギはよく知っている。
 
[ おお・・・もう来てたのか? ]
やさしい低い声で呟いた。

その狼は・・・いつもマタギをジッと見ていた。



                    (続きは・・・サムデイ・ネヴァー・カムズ)


 










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by karkowitch | 2007-02-21 22:47 | 創作童話・小説